AIでコンサルの仕事はなくなる?現役が考える生存戦略

目次
結論:なくなる仕事はある。でも全部じゃない
「AIでコンサルの仕事はなくなるのか」。この問いに対する僕の答えは、半分イエス、半分ノーだ。
僕はBig4コンサルファームでITコンサルタント・チームリーダーとして約2.5年働き、今はフリーランスのIT・AIコンサルタントとして独立3年目を迎えている。AIを業務に組み込んだことで、週の作業時間が50時間から35時間に減った。15時間分の仕事が消えた計算だ。
ただ、消えたのは「作業」であって「仕事」ではない。この違いを理解しているかどうかが、AIに淘汰される側とされない側を分ける境界線になる。
AIに代替されるコンサル業務
まず、厳しい現実から書く。以下の業務は、2〜3年以内にAIでほぼ代替されると僕は考えている。
リサーチと情報収集
業界調査、競合分析、市場規模の推計。Big4時代、ジュニアコンサルの主な仕事がこれだった。IR資料を読み漁り、業界レポートを要約し、スライドにまとめる。今やClaude APIに投げれば、8割の精度の下書きが30分で仕上がる。
僕がClaude APIで業務を自動化した方法で紹介した通り、情報の整理と構造化はAIの得意領域だ。人間がやる必要はもうない。
定型レポートと資料のドラフト
週次報告、月次レポート、ステータスアップデート。フォーマットが決まっている成果物は、AIに置き換わるスピードが速い。実際、僕のクライアント先でも定型レポートの7割をAIが生成する運用に切り替わったプロジェクトがある。
データ整理と分析の下準備
Excelで数字を整理し、ピボットテーブルを回し、グラフを作る。この手の作業はPythonスクリプト+AIで自動化できる。Big4時代に深夜までやっていたデータ加工作業を思い出すと、虚しくなるレベルだ。
AIに代替されないコンサル業務
一方で、AIには当分できない仕事がある。
クライアントとの信頼構築
結局、コンサルの仕事はクライアントが「この人に任せたい」と思ってくれるかどうかで決まる。経営者の言葉にならない不安を引き出す、現場の抵抗勢力を味方につける、ステアリングコミッティで空気を読んで発言する。こういうスキルはAIには不可能だ。
政治的に複雑な意思決定の支援
「正解」がわかっていても実行できないのが組織の現実だ。部門間の利害調整、役員の面子を立てながら方針を通す、反対派を巻き込むストーリーを設計する。これはロジックだけでは解決できない。
ゼロからの仮説構築と提言
AIは既存の情報を組み合わせるのは得意だが、「そもそもこの問題の立て方が間違っている」と気づくのは人間の仕事だ。課題設定そのものを再定義するような上流の仕事は、まだ人間にしかできない。
僕の周りで起きた3タイプの反応
Big4を辞めた後もコンサル時代の同僚とは定期的に連絡を取っている。AIに対する反応は、きれいに3タイプに分かれた。
タイプ1:AIを無視した人
「AIなんて一過性のブームでしょ」と言っていたマネージャーがいた。2024年頃はそれでも通用していたが、2025年後半からクライアント側がAI活用を前提とした提案を求め始めた。対応できず、アサインされる案件が減っている。社内評価も下がったと聞く。
タイプ2:AIを武器にした人
僕と同期だったコンサルタントで、独学でPythonとプロンプトエンジニアリングを学んだ人がいる。今はAI戦略のプロジェクトリーダーとして、社内で引っ張りだこだ。入社4年目でシニアマネージャー相当のポジションに抜擢された。
タイプ3:不安で転職した人
「AIが怖い」という漠然とした不安から、コンサルを辞めて事業会社の経営企画に転職した人が2人いる。AIから逃げたはずが、転職先でも「AI活用の推進」を任されている。結局、どこに行ってもAIからは逃げられないのが現実だ。
あなたはどっち?判断マトリクス
AIとの向き合い方は、全員が同じである必要はない。「AIに強いコンサル」を目指すべき人もいれば、「AI以外の強みを磨く」方が合っている人もいる。
AIに強いコンサルを目指すべき人:
- テクノロジーへの好奇心がある(触って楽しいと感じる)
- ロジック重視の仕事スタイル
- 独立やフリーランスを視野に入れている
- IT・デジタル領域のプロジェクト経験がある
AI以外の強みを磨くべき人:
- 人間関係の構築が圧倒的に得意
- 特定業界(ヘルスケア、金融規制など)の深い知見がある
- マネジメントやチームビルディングで成果を出してきた
- テクノロジーよりも組織変革やチェンジマネジメントに関心がある
どちらが優れているという話ではない。大事なのは、自分の特性を見極めて戦う場所を選ぶことだ。ただし、どちらの道を選んでも「AIについて無知」は致命的になる。最低限の理解は全員に必要だと僕は思う。
3つの生存戦略
ここからは具体的な生存戦略を3パターン提示する。
戦略1:AIネイティブコンサルタント
AIツールを使いこなし、従来の3倍の生産性で成果物を出す路線だ。僕はこのポジションを取っている。
コンサル出身者がAIスキルを身につけると市場価値はいくら上がるのかでも書いたが、AIを実務で使えるコンサルタントの月額単価は、使えない人と比べて40万円以上の差がある。
ただし、ここにはダークサイドがある。「AI使えます」だけでは差別化にならない未来が、もう目の前に来ている。2024年時点では「ChatGPT使えます」が武器になったが、2026年の今、それは当たり前になりつつある。AIを使えることの価値は急速に下がっている。差別化するには「AIで何を成し遂げたか」の実績が問われる。
戦略2:AI×業界特化のハイブリッド
AIの知見と特定業界の深い知識を掛け合わせる路線だ。たとえば「ヘルスケア×AI」「金融規制×AI」「製造業のサプライチェーン×AI」。
この組み合わせの強みは、参入障壁が高いこと。AIだけわかる人は増えているが、「金融規制をわかった上でAI導入のリスク評価ができる人」は極めて少ない。希少性のプレミアムが乗る。
僕の知人で、製薬業界のコンサル経験を持ちながらAIスキルを加えた人がいる。臨床試験データのAI解析という超ニッチ領域で、年収2,000万円を超えている。
戦略3:マネジメント・人間関係スキルで勝負
AIに強くならなくても生き残れる道は、マネジメントと人間関係構築のスキルを極める路線だ。
プロジェクトが複雑化・大規模化するほど、人間同士の調整コストが上がる。クライアントの政治を読む、チームのモチベーションを管理する、ステークホルダー間のコンフリクトを解消する。この「人間系スキル」は、むしろAI時代に価値が上がる。
ただ注意点がある。この戦略は社内での評価が見えにくい。数字で成果を示しにくいため、「マネジメントできます」だけでは転職市場での訴求力が弱い。組織変革やチェンジマネジメントの実績を、数字と紐づけて語れるようにしておく必要がある。
AIコンサルバブルへの警告
ここで一つ、あえてダークサイドの話をしておく。
今、「AIコンサル」を名乗る人やファームが爆増している。元エンジニアが「AIコンサル」、元営業が「AI導入支援」、経験の浅い若手が「AI戦略アドバイザー」。市場がバブル気味なのは否定できない。
だからこそ、今のうちに「実績」を積むことが重要になる。AIの知識やスキルは差別化要因として急速にコモディティ化する。バブルが弾ける前にポジションを確立しないと、波に飲まれる。
3ヶ月アクションプラン
最後に、今日から始められる具体的なアクションプランを提示する。3ヶ月で「AIを武器にしたコンサルタント」の入口に立つロードマップだ。
月1:実務でAIを使い倒す
最初の1ヶ月は、とにかく自分の業務にAIを組み込む。議事録の作成、リサーチの下準備、メールのドラフト、プレゼン資料の構成案。何でもいい。
Claude、ChatGPT、Gemini。どのツールでもいい。大事なのは「触ってみる」ではなく「業務で使い倒す」ことだ。
月2:成果物で社内実績を作る
2ヶ月目は、AIを活用した成果物で社内に実績を作る。AI活用のBefore/Afterを数字で示し、チーム内で共有する。
たとえば、「市場調査レポートの作成時間を従来の3日から1日に短縮」「定型レポートの自動生成でチーム全体の工数を月20時間削減」。こういう具体的な数字を社内の事例として確立する。
上司やパートナーに対して「AI活用の知見がある人」というポジションを取ることが目的だ。
月3:ポジショニングを確立する
3ヶ月目は、社内外でのポジショニングを固める。
3ヶ月は短い。でも、この3ヶ月で「AIを使えるコンサルタント」の入口に立てるか、何も変わらないまま過ごすかで、1年後のキャリアは大きく変わる。
AIは敵じゃない、でも味方にしないと負ける
僕はBig4を辞めて独立し、AIスキルを掛け合わせたことで、週50時間の長時間労働から解放された。案件の幅も広がり、単価も上がった。コンサルを辞めた後の転職先ではブランドが通じなかった話でも書いたが、コンサルの肩書きだけでは生き残れない時代がもう来ている。
AIでコンサルの仕事がなくなるかと聞かれたら、僕はこう答える。「作業」はなくなる。でも「仕事」はなくならない。ただし、AIを味方にしない人の「仕事」はなくなる。
行動するなら今だ。3ヶ月後の自分が「あの時始めてよかった」と思えるように、今日から一歩を踏み出してほしい。
あなたの次の一歩は?
Kay
IT業界12年Big4コンサル出身日英バイリンガル新卒でメガベンチャーに入社後、ITベンチャー、事業会社のシステム部門を経て、Big4コンサルファームでITコンサルタントとしてチームリーダーを務める。その後フリーランスとして独立し、現在はAI活用コンサルティング・ITコンサルティングを中心に活動。日英バイリンガル。


