事業会社とコンサルファームの両方を経験してわかった、それぞれのリアル

目次
事業会社とコンサル、どっちがいいのか問題
「事業会社とコンサル、結局どっちがいいんですか?」
転職相談でこの質問をもらうことが本当に多い。僕は毎回、「両方やったけど、正解はない。ただし、向き不向きはかなりはっきり出る」と答えている。
僕はメガベンチャーでマーケティングを約2.5年、ITベンチャーと飲食チェーンのシステム子会社で社内SEを計2.5年ほど経験した後、Big4コンサルファームに転職した。コンサルでは約2.5年、ITコンサルタントとして年収700万円から1,000万円まで上がった。IT業界トータルでは約12年になる。
この記事では、事業会社とコンサルの両方を経験した立場から、年収、働き方、成長速度、向き不向きを整理する。どちらかを持ち上げる記事ではない。読んだ後に、「自分はどちらを先に選ぶべきか」を判断できる状態にするのが目的だ。
事業会社とコンサルの違いは、年収だけでは判断できない。この記事では「成果の見え方」「成長速度」「働き方」「次のキャリアへのつながり」の4つの観点で、両方のリアルを比較する。
結論:上下ではなく「今の不足経験」と順番で考える
最初に結論から言うと、事業会社とコンサルは上下関係ではない。違うのは、鍛えられる筋肉と、得られる経験の種類だ。
事業会社では、自分が関わったプロダクトやシステムの結果を最後まで見届けられる。現場の反応も見えるし、成功も失敗も自分ごとになる。一方で、同じ会社・同じ事業・同じシステムを見続けるため、環境によっては成長の天井が早く来る。
コンサルでは、短期間で多くの業界、企業、課題に触れられる。構造化、資料作成、ファシリテーション、プロジェクトマネジメントは一気に鍛えられる。一方で、どこまでいっても外部の人間であり、最終的な実行責任を持ちきれないもどかしさがある。
事業会社で得られるのは「現場の中で成果を出す経験」、コンサルで得られるのは「複数の現場を横断して課題を整理する経験」だ。どちらも重要だが、同時には得にくい。
だから迷った時は、年収やブランドから選ぶより、「今の自分に足りない経験」から逆算する方が後悔しにくい。事業会社で実行経験を積んだ人なら、次はコンサルで構造化力や大企業向けプロジェクト経験を取りに行く意味がある。逆に、新卒からコンサルで提案や資料作成を続けた人なら、事業会社で実行責任を持つ経験が市場価値を広げる。
僕自身は、事業会社を経験してからコンサルに行ったことで、クライアント側の苦しさがある程度わかった。「現場はこう動かない」「この提案は運用に落ちない」と感じられたからだ。もし最初からコンサルに行っていたら、20代のうちに資料作成やプロジェクト推進の型を身につけ、もっと早く年収を上げられたかもしれない。どちらの順番にもメリットと欠点がある。
事業会社は「実行責任」を取りに行く場所。コンサルは「構造化力と横断経験」を取りに行く場所。この違いを理解せずに年収だけで選ぶと、入社後の違和感が大きくなる。
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Big4出身者向けの無料相談事業会社のリアル:結果が自分ごとになる
事業会社で一番よかったのは、自分が関わったシステムやプロジェクトの結果を最後まで見届けられることだった。
飲食チェーンのシステム子会社にいた時、店舗の発注システムを改修したことがある。導入後に現場のオペレーション工数が目に見えて減った。店長から直接「助かった」と言われた時の嬉しさは、コンサル時代には一度も味わえなかった。
事業会社では、自分の仕事の影響範囲が明確だ。売上が伸びた、現場の負荷が下がった、問い合わせが減った。そういう結果が、自分の仕事とつながって見える。
これは精神衛生上かなり大きい。誰のために働いているのかがわかりやすいからだ。社内SEであれば、ユーザーは同じ会社の社員や店舗スタッフになる。マーケティングであれば、自分の施策が事業数値にどう影響したかを追える。
ただし、事業会社には成長の天井もある。同じ会社の同じシステムを相手にしていると、1〜2年で全体像が見えてしまう。キャッチアップが終わると、あとは運用と小さな改善の繰り返しになりやすい。
僕がITベンチャーや飲食システム子会社を比較的短期間で離れたのも、この「成長の天井」を感じたからだった。もちろん急成長中の会社なら刺激は多い。ただ、安定期の会社では、仕事の幅が会社の成長フェーズに強く制約される。
コンサルファームのリアル:短期間で型が身につく
Big4に入って最初の半年で、事業会社5年分くらいの密度を経験した。これは大げさではない。触れた「業界×業務」の数で比較すると、違いがはっきり見える。
3ヶ月単位で異なる業界のクライアントと仕事をする。毎回、知らない業界、知らない業務、知らないステークホルダーに向き合う。最初はかなりきついが、その分キャッチアップ力は鍛えられる。
構造化思考、資料作成、ファシリテーション、プロジェクトマネジメント。これらのスキルは、コンサルに入ってから圧倒的なスピードで身についた。年収も入社時の約700万円から、2.5年で約1,000万円まで上がった。事業会社で同じ上がり幅を実現するには、5〜7年はかかったと思う。
一方で、コンサルには「お客さん」から抜け出せない弱さがある。どれだけ立派な提案書を作っても、実行するのはクライアントだ。外部の立場である以上、最終的な意思決定や実行責任は持ちきれない。
僕は事業会社出身だったので、この違和感は強かった。事業会社側にいた時は「この提案、現場のことをわかっていないな」と思うことがあった。コンサル側に回ると、今度は自分がその提案を出す側になる。
コンサルは「正しいことを整理して伝える力」が鍛えられる。一方で、事業会社は「正しいことを現場で実行しきる力」が問われる。この2つは似ているようで、かなり違う。
さらに、コンサルを辞めたいと思った瞬間にも書いたが、業務がルーティン化するタイミングも来る。フレームワークに沿って資料を作り、レビューを受け、修正する。型があるから品質は安定するが、「僕じゃなくてもできる」と感じ始めると、しんどさが増える。
判断マトリクス:5つの軸で比較する
ここまでの話を、キャリア選択の判断軸として整理すると次のようになる。
| 判断軸 | 事業会社 | コンサル |
|---|---|---|
| 成果の見えやすさ | 高い。自分の施策やシステムの結果を追いやすい | 中程度。提案やプロジェクト成果は見えるが、実行結果はクライアント次第 |
| 成長速度 | 会社のフェーズ次第。安定期は緩やか | 速い。短期間で複数業界・複数テーマに触れられる |
| 年収の上がりやすさ | 中程度。昇進や転職が必要になりやすい | 高い。転職タイミング次第で20代後半から1,000万円が見える |
| 働き方の安定性 | 比較的安定。残業は会社による | プロジェクト次第で大きく変わる |
| 次のキャリアへの汎用性 | 実行経験・事業理解が武器になる | 看板・構造化力・PM経験が武器になる |
年収だけ見れば、コンサルの方が強い。僕自身も、事業会社時代の年収は400万〜550万円程度だったが、Big4では約700万円から1,000万円まで上がった。同じ年次で見ると、200万〜400万円ほど差が出ることもある。実際の年収カーブを並べると、差はこう見える。
ただし、時給換算すると印象は変わる。事業会社で18時に帰れる日と、コンサルで23時まで働く日を比べると、「本当に得しているのはどちらか」と考えることもあった。通常週の1日を並べると、こう違う。
| 時間 | 事業会社(社内SE) | Big4コンサル |
|---|---|---|
| 9 | 出社・Slack確認 | クライアント先へ移動 |
| 10 | 運用対応・問い合わせ | 朝会・タスク整理 |
| 12 | 昼休み(外でランチ) | 昼休み(自席で軽食) |
| 13 | 定例MTG | クライアント定例 |
| 15 | ベンダー打ち合わせ | ヒアリング・分析 |
| 18 | 残タスク | 資料作成・チーム内レビュー |
| 19 | 退社 | マネージャーレビュー反映 |
| 22 | — | 翌日資料の最終調整 |
| 24 | — | 退社 |
※ 通常週の一例。提案期・報告期はコンサル側がさらに重くなる。
コンサルの年収が高いのは、看板代とストレス耐性の対価でもある。短期間で高い密度の経験を積める一方で、プロジェクトによっては生活の余白がかなり削られる。年収だけでなく、時間の使い方まで含めて比較した方がいい。
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Big4出身者向けの無料相談向いている人:性格よりも、欲しい経験で考える
「自分は事業会社向きか、コンサル向きか」と聞かれることがある。性格で分けることもできるが、僕はそれよりも「今欲しい経験」で考えた方がいいと思っている。
事業会社に向いているのは、ひとつのプロダクトや事業に深く関わりたい人だ。提案より実行にやりがいを感じる人、長期的な人間関係を作りながら成果を出したい人、現場に近い場所で仕事をしたい人には合いやすい。
コンサルに向いているのは、短期間で多くの業界や企業を見たい人だ。年収を早く上げたい人、構造化思考やロジカルシンキングが好きな人、同じ環境に長くいると飽きやすい人には合いやすい。
- ひとつの事業やプロダクトに深く関わりたい
- 提案よりも実行にやりがいを感じる
- 社内の人間関係を長期的に築くのが得意
- ワークライフバランスも重視したい
コンサルを選びやすい人
- 短期間で多くの業界・企業を見たい
- 年収を早く上げたい
- 構造化や資料作成が苦ではない
- 同じ業務の繰り返しに飽きやすい
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ここで大事なのは、どちらか一方に自分を固定しないことだ。僕自身は、事業会社で現場を知った後にコンサルへ行った。その経験が、コンサルとしても、独立後のフリーランスとしても武器になった。
事業会社で実行経験を積んだ人がコンサルへ行けば、現場をわかるコンサルになれる。コンサルで構造化力を鍛えた人が事業会社へ行けば、曖昧な課題を整理して前に進める人材になれる。順番によって、強みの出方が変わる。
僕ならどう選ぶか
もし20代前半に戻れるなら、僕は「事業会社で現場を知る期間」と「コンサルで型を鍛える期間」の両方を取りに行く。片方だけでキャリアを決め切るより、両方を経験した方が市場価値の幅が広がるからだ。
ただし、順番は人による。現時点で年収を早く上げたい、成長環境に身を置きたい、看板を取りに行きたいなら、コンサルを先に選ぶ価値はある。特に20代であれば、きつい環境に数年入るリターンは大きい。
一方で、現場の解像度を上げたい、プロダクトや事業に深く関わりたい、自分の仕事の結果を最後まで見たいなら、事業会社を選ぶ価値がある。特に将来的にフリーランスや事業責任者を目指すなら、実行側の経験はかなり効く。
僕自身はどちらかと言えばコンサルタイプだった。でも、事業会社での「現場を知っている」経験があったから、コンサルでも独立後でも差別化できた。どちらが上かではなく、順番と組み合わせの問題だと思っている。
まとめ:正解探しより、次に鍛える力を決める
事業会社とコンサルは、どちらが正解という話ではない。
事業会社では、実行責任、現場理解、長期的な改善力が鍛えられる。コンサルでは、構造化力、プロジェクト推進力、短期間でのキャッチアップ力が鍛えられる。
どちらを選ぶべきか迷ったら、「今の自分に足りない力は何か」を考えてほしい。現場感が足りないなら事業会社。構造化力や看板が足りないならコンサル。そう考えると、判断はかなりシンプルになる。
コンサルを辞めた後のキャリア5パターンも参考にしてみてほしい。事業会社に戻る道、フリーランスになる道、スタートアップに行く道など、選択肢はいくつもある。
大事なのは、自分が「どんな働き方をしたいか」と「次にどんな力を鍛えたいか」を言語化することだ。それさえ明確になれば、事業会社でもコンサルでも、選んだ道を次のキャリアにつなげられる。
言語化が難しいときは、コンサル経験者を多く見ている転職エージェントに無料相談するのも近道だ。自分の市場価値や、年収・働き方の選択肢が一気に具体化する。
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Kay
IT業界12年Big4コンサル出身日英バイリンガル新卒でメガベンチャーに入社後、ITベンチャー、事業会社のシステム部門を経て、Big4コンサルファームでITコンサルタントとしてチームリーダーを務める。その後フリーランスとして独立し、現在はAI活用コンサルティング・ITコンサルティングを中心に活動。日英バイリンガル。


