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日英バイリンガルがBig4コンサルで得した場面・損した場面

グローバルキャリア11分で読める
Kay
KayBig4出身のAI・ITコンサルタント
日英バイリンガルがBig4コンサルで得した場面・損した場面
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目次

「英語できるんでしょ?」から始まるコンサル生活

Big4コンサルファームに中途で入社した初日。自己紹介で「日英バイリンガルです」と言った瞬間、周囲の反応が変わったのを覚えている。

「おお、英語できるんだ」「グローバル案件に入れるね」。好意的な声が多かった。でも、その言葉の裏にあるものに気づくのは、もう少し後のことだった。

僕はIT業界12年のキャリアの中で、ECサイト運営、ITベンチャー、食品サービス企業の社内SE(社内のシステムエンジニア)を経験した後、Big4に入った。英語は帰国子女ではなく、実務で磨いてきたタイプだ。TOEICのスコアは900点台後半。ただし、コンサルで本当に求められる英語力は、テストの点数とはまったく別物だった。

この記事では、日英バイリンガルとしてBig4で約2.5年働いた中で「英語が武器になった場面」と「英語のせいで損した場面」をリアルに振り返る。

得した場面ベスト5 — 英語力が武器になった瞬間

1. グローバルプロジェクトに優先アサインされた

Big4にはグローバル案件が一定数ある。僕がいたファームでは、全体の案件数のうちグローバル案件は約15〜20%。数としては多くないが、単価が違う。日本語オンリーの案件と比べて、グローバル案件は月額単価が20〜30%高いケースが多かった。

英語ができるコンサルタントは社内でも希少だ。体感では、実務レベルの英語を使えるメンバーはチーム全体の10〜15%程度。需要に対して供給が足りていないので、バイリンガルはアサインの選択肢が広がる。僕も入社半年でグローバルPJ(プロジェクト)にアサインされた。希望が通りやすいのは、英語人材の特権だった。

2. 海外オフィスとの連携で信頼を得た

Big4は世界中にオフィスがある。グローバルPJでは、インドやフィリピンのデリバリーセンター、USやUKの本社チームと日常的にやり取りする。

このとき、英語でスムーズにコミュニケーションが取れると、海外チームからの信頼が段違いに上がる。具体的には、要件定義のミーティングで日本側の意図を正確に伝えられる、チャットで即座にレスポンスを返せる、ニュアンスの誤解を事前に防げる。結果として、プロジェクト全体の進行が早くなり、マネージャーからの評価にも直結した。

3. 外資クライアントとの直接交渉を任された

日本に進出している外資系企業がクライアントになると、キーパーソンが外国人であることが多い。通訳を介さずにCxOレベルと直接ディスカッションできるのは、大きなアドバンテージだった。

あるPJでは、クライアントのCIOがアメリカ人で、日本語がほぼ話せなかった。僕がフロントに立って要件をヒアリングし、日本側のチームに展開する役割を担った。結果的に、シニアマネージャーと同席する場面が増え、ジュニアの立場では通常ありえないクライアント接点を持てた。

4. グローバルナレッジへのアクセス権

Big4にはグローバル共通のナレッジベースがある。フレームワーク、ベストプラクティス、過去のプロジェクト事例。これらの多くは英語で書かれている。

日本語しか読めないコンサルタントは、日本オフィスの限られたナレッジに依存する。一方、英語が読めれば全世界の事例にアクセスできる。提案書の質が明らかに変わる。僕は海外のナレッジを参考にして提案を作り、「こんな事例どこから見つけてきたの?」と上司に言われたことが何度もあった。

5. 昇進面接でのプレゼンス

Big4の昇進プロセスでは、グローバルPJの経験が評価される。特にマネージャー以上の昇進では「グローバルデリバリーの経験」が評価項目に含まれることがある。

バイリンガルであれば、グローバルPJに入る機会が多く、昇進面接で語れるエピソードが自然と増える。僕のケースでは、昇進の推薦状にグローバルPJでの成果が記載されていた。英語ができるだけで昇進できるわけではないが、チャンスの打席数が増えるのは確かだ。

損した場面ベスト3 — バイリンガルの落とし穴

1. 「翻訳係」にされる問題

これが最大のダークサイドだ。

「Kayさん、この資料を英訳してもらえる?」「この英文メール、ちょっと見てくれない?」。入社して数ヶ月で、こうした依頼が増えた。最初は「頼りにされている」と思っていたが、気づけば工数の15〜20%が翻訳関連に消えていた。

問題は、翻訳業務が評価に直結しないことだ。プロジェクトのデリバリーとは関係のない「お手伝い」扱いになる。翻訳にかかった時間は、自分の本来のタスクを圧迫する。でも断ると「英語できるのに協力してくれない」と思われる。

僕は途中から「翻訳ツールの使い方を教えるので、まずはそれで試してみてください」と伝えるようにした。自分の時間を守るための線引きは、バイリンガルにとって必須スキルだ。

2. 時差会議地獄

グローバルPJにアサインされると、会議の時間帯がカオスになる。USチームとは日本時間の夜21〜23時、UKチームとは夕方17〜19時、インドチームとは昼13〜15時。一日のスケジュールが時差に支配される。

あるPJでは、US本社のステアリングコミッティ(経営層向けの報告会議)が日本時間の23時開始だった。それが隔週。さらに、翌朝9時から日本側のクライアント会議がある。睡眠時間が削られ、体調を崩した時期もあった。

グローバル案件は単価が高い分、体力的な負荷も高い。この点は入る前に覚悟しておくべきだ。

3. 「英語ができるだけ」と思われるリスク

これは意外と深刻な問題だ。バイリンガルというラベルが先行すると、「あの人は英語ができるから呼ばれている」という認識をされることがある。コンサルとしての実力、つまり課題整理力や仮説構築力、デリバリーの品質ではなく、英語力だけで評価されているのではないか、という疑念が周囲にも自分にも生まれる。

特に、日本語オンリーの案件に移った時にこのギャップを感じた。グローバルPJでは重宝されていたのに、国内案件では「普通のコンサルタント」として見られる。英語というフィルターを外した時に、自分に何が残るか。これはバイリンガルコンサルが必ず向き合うべき問いだと思う。

外資コンサルで求められる英語レベル — シーン別の現実

TOEICスコアだけで判断されるのはもどかしいが、現実として入社時のスクリーニングでは使われる。ただし、入ってからはスコアなど誰も気にしない。「会議で発言できるか」「メールを即座に返せるか」が全てだ。

メール・チャット(TOEIC 750+相当)

定型的なやり取りが中心。ただし、レスポンスの速さが求められる。海外チームからの質問に翌日返信では遅い。30分以内に返せるかどうかで、信頼度が変わる。

会議でのディスカッション(TOEIC 850+相当)

ここから一気にハードルが上がる。議論の流れを追いながら、自分の意見を論理的に述べる必要がある。特にネイティブスピーカーが複数いる会議では、発言のタイミングを掴むのが難しい。僕も最初の半年は、言いたいことの7割しか伝えられなかった。

プレゼン・ファシリテーション(TOEIC 900+相当)

クライアント向けのプレゼンを英語で行う、会議のファシリテーションを英語で回す。これができると、グローバルPJでの存在感が決定的に変わる。ただし、ここまで求められるのはマネージャー以上のケースが多い。

交渉・エスカレーション(ネイティブレベル)

スコープ変更の交渉、予算の再調整、クレーム対応。感情的になりやすい場面で、適切な表現を選びながら英語で交渉する力。正直、僕もここは完全ではなかった。ニュアンスの一つで関係性が変わるので、最も難しいスキルだ。

英語力を武器にすべきか、補助スキルに留めるべきか

全員がグローバル路線を目指すべきではない。自分のキャリアの軸がどこにあるかで、英語力の位置づけは変わる。

英語力を「武器」にすべきキャリアパス

  • 外資系事業会社への転職を目指す人 — 英語力がそのまま応募条件になる
  • 海外オフィスへの異動・駐在を狙う人 — グローバルPJの実績が必須
  • フリーランスで海外案件を取りたい人 — 僕自身、独立後に英語案件の単価の高さを実感している
  • グローバルスタートアップで働きたい人 — 社内公用語が英語のケースが多い

英語は「補助スキル」に留めるべきキャリアパス

  • 国内の事業会社で経営企画をやりたい人 — 英語より業界知識と社内政治力が重要
  • 特定業界の専門コンサルを目指す人 — 業界専門性の方が単価に直結する
  • 起業を考えている人 — 日本市場をターゲットにするなら英語力の優先度は低い
  • PMO/プロマネの道を極めたい人 — マネジメント力が本質で、英語はオプション

どちらが正解ということではない。大事なのは、英語力を「キャリアの柱」にするか「引き出しの一つ」にするかを自覚することだ。

英語ができる同僚たちのキャリア分岐

僕がBig4で一緒に働いたバイリンガルの同僚たちは、退職後にさまざまな道を歩んでいる。

海外赴任組 — Big4のグローバル異動制度を使って、シンガポールやロンドンのオフィスに移った人が2人いた。現地での年収は日本の1.3〜1.5倍。ただし、現地でのパフォーマンスが出せずに1年で帰任したケースもある。

外資事業会社組 — GAFAやグローバルSaaS企業に転職した人が最も多い。年収は1,200〜1,800万円レンジ。コンサルの構造化思考と英語力の掛け合わせが高く評価される。

グローバルスタートアップ組 — 海外のスタートアップにHead of Japan / Country Managerとして入った人が1人。年収はストックオプション込みで未知数だが、裁量は圧倒的に大きい。

国内事業会社組 — 英語力を武器にせず、業界専門性で勝負する道を選んだ人もいる。日系大手のDX推進部長になった同僚は、英語は「読めるけど会議ではあまり使わない」レベルに落ち着いている。

結局、英語力がキャリアを決めるのではなく、英語力を「何と掛け合わせるか」が分岐点になる。

3ヶ月アクションプラン — 英語力をキャリアに活かす具体的ステップ

1月1:英語力の棚卸し — 自分の英語が「どのシーンで使えるか」を上記のシーン別レベルで把握する。TOEICスコアではなく、実務シーンベースで自己評価する。
2月2:LinkedInプロフィール整備 — 英語でプロフィールを作成し、グローバル案件の実績を記載する。リクルーターからのスカウトが明らかに増える。僕も独立前にLinkedIn経由で3件の案件オファーをもらった。
3月3:グローバル案件への交渉 — 社内のリソースマネージャーやカウンセラーに「次はグローバル案件に入りたい」と明確に伝える。併行して、転職エージェントに登録し、グローバルポジションの市場感を掴む。

英語力を活かしたキャリアの次の一歩

僕はBig4を辞めてフリーランスになった今、英語案件の比率は全体の約40%。単価は日本語案件より30%ほど高い。コンサルを辞めた理由にも書いたが、独立後に英語力が最も活きたのは「クライアントの選択肢が広がる」ことだった。

バイリンガルであることは、コンサルでは間違いなく武器になる。ただし、翻訳係にされない自衛力と、英語以外の専門性を磨き続ける覚悟がセットで必要だ。英語は「スキルの掛け算」であって、それ単体では成立しない。

もし英語力を活かしてコンサルに入りたい、あるいはコンサルから英語を軸にキャリアチェンジしたいと考えているなら、まずは自分の市場価値を確認することをおすすめする。JACリクルートメントのようなハイクラス×グローバル特化のエージェントであれば、バイリンガル人材のキャリアを正しく評価してくれる。

英語力を武器にするか、補助スキルに留めるか。その判断ができるのは、自分だけだ。

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Kay

Kay

IT業界12年Big4コンサル出身日英バイリンガル

新卒でメガベンチャーに入社後、ITベンチャー、事業会社のシステム部門を経て、Big4コンサルファームでITコンサルタントとしてチームリーダーを務める。その後フリーランスとして独立し、現在はAI活用コンサルティング・ITコンサルティングを中心に活動。日英バイリンガル。